ニッケ日記

徒然なるままに書いています

【銘柄分析】大和工業

はじめに

 こんにちは。ニッケと申します。

 本日は大和工業グループ(証券コード:5444)について分析します。

企業概要

 大和工業は、ビルや工場の建設に用いられるH形鋼の製造・販売を行っている会社です。国際的に展開する会社で、アメリカ・ベトナムサウジアラビアなど世界7拠点で生産を行っています。

H型鋼とは

 H形鋼とは、ローマ字の「H」の形をした鋼材で、鉄骨造で良く用いる鋼材です。柱や梁、二次部材(小梁、間柱、耐風梁等)への使用を通じて、ビルや工場の建設など多様な用途に用いられます。

H形鋼市場の歴史

 日本におけるH形鋼価格の分析を行った研究によると、日本のH型鋼は5つのステージに分けることができます。

成長期(1960年~1970年頃まで)

 時代は高度経済成長期の真っ只中にあり、H形鋼生産量が設備投資の増加によって右肩上がりだった時期です。

成熟安定期(1970年~1985年まで)

 第一次・第二次石油危機(1973年と1978年)がH形鋼生産量の減少に大きく影響を及ぼした時期です。鉄鉱石から鉄を作る高炉法鉄ではなく、鉄スクラップから作る電炉法のメーカーが登場し競争が激化し始めた時でもあります。

試練期(1985年~2000年頃まで)

 プラザ合意(1985年)による円高が進行したことで、輸出依存型の国内製造業向け需要が下落し、鉄鋼メーカーにとっては需要が減少すると同時に生産コストが低下した時期です。また、後半はバブル崩壊の影響もあり、H形鋼の価格が下落を続け、1998年には電炉大手であったトーアスチールが経営破綻しました。

復権期(2001年~2005年)

 中国国内の製造業の成長に伴う、インフラ建設と住宅建設を大きな要因とする回復の時期です。一方、中国を筆頭とする新興諸国における鉄鋼需要の大幅上昇を背景とした原燃料価格の急騰による苦しんだ時でもあります。

混迷期(2006年~)

 鉄鋼業界内部でのパワーバランスに変化が出始めた時代です。ミッタル・スチールによる国際的な買収が進み、突如巨大なプレーヤーが誕生しました。結果として、国内鋼材市場は否応なく世界的な資源獲得競争、鉄鋼再編競争の渦に巻き込まれています。

 大和工業の礎となる川西航空機(株)の姫路地区協力工場ができたのは1944年11月です。

 そのため、この会社は近代の日本鉄工業の歴史とともにあると言えます。

製品

 鉄鋼事業と軌道用品事業用の製品が主な柱です。

鉄鋼事業

 H形鋼を中心に、鋼矢板、山形鋼、棒鋼等建設に用いられる鋼材を中心に製造しています。

鉄鋼事業
(写真は会社説明資料より引用)

軌道用品事業

 鉄道線路を分岐させる装置である分岐器や、レールを固定する為の部材であるタイプレートが主軸の製品です。

軌道用品事業
(写真は会社説明資料より引用)

財務

 2021年3月本決算を基に、ヤマト工業の財務状況を業績を他のメーカーと比較してみます。

大和工業 東京製鐵 JFE 中山製鋼所
時価総額 2,919億円 2,320億円 8,786億円 269億円
売上 150,029 270,883 4,365,145 166,701
利益率 8.86 11.73 9.17 4.35
ROE 12.24 22.09 15.71 5.56
ROA 10.3 14.99 5.79 3.61
有利子負債 - 0.01 0.93 0.18
営業CF 11,457 26,915 298,738 -8,756
投資CF 76,736 -9,678 -288,034 -2,308
財務CF -15,904 -7,483 -57,427 8,388

 この表を見て一番気になる点は時価総額です。財務状況的に東京製鐵の方が良いのに、大和工業の方が高く評価されています。

 要因の1つとしてグローバル展開があるのではないかと考えます。2021年3月の本決算資料によると、大和工業の方が積極的に海外に乗り出していることが分かります。

大和工業セグメント別販売実績

東京製鐵セグメント別売上

 昨今の円安の影響を受け、日本を軸とする東京製鐵は輸入コストが増加、一方で、大和工業は地理的リスクが分散され円安の影響を比較的受けていないのではと思いました。

 ただし、H形鋼市場の歴史でまとめた円高による試練期とは逆に、日本からの輸出が増えれば、今後は東京製鐵が優勢になる可能性も否定できないですね。

サウジアラビアの新規鉄道事業

 ところで、現在サウジアラビアでは大規模な鉄道建設計画が複数動いています。

 そして、不思議なことにヤマト工業のサウジアラビア拠点は、アングルと呼ばれる鉄道に使われる逸脱防止ガードの部品を製造しています。

 正確な情報は手に入らず、関連しているのかは分かりませんでしたが、何らかの形で受注に繋がったらおもしろいですね。

おわりに

 最後までご覧いただきありがとうございました。この記事がいいなと思った方は是非スター・コメントをよろしくお願いします。

参考